SolitOUD

7コース13弦ウード&カマンチェと過ごす穏やかな日常

巡り合わせの不思議

 世界中で COVID-19 の猛威に見舞われている中、私も家に籠もって静かに楽器の練習をしています。このような異国の楽器を弾きながらつくづく、巡り合わせ、縁というのは不思議なものだなと思いを馳せています。

 何かの案件が起こり、その渦中にいるときは「不運だ」「なんということだ」と思っていても、後になってみると「実は幸運だった」「本当にそれで良かった」としか言えない、そんな具体例を今いくつも目の当たりにしています。

 

 今年1月に、私自身もお世話になったスペイン人のスペイン語講師のお母様が他界されました。しかし今思うと「あの時で本当に良かったね」としか言えません。今では飛んで帰ることもできませんし、スペインではとうとう葬儀の禁止令まで出たとのこと。人様のご不幸ですら、「あれで良かった」としか言えない、人知を超えた巡り合わせの不可思議

 私のカマンチェも、今こんなに夢中になって弾いていることが不思議で仕方ありません。先日も書いた通り長谷川先生の擦弦楽器購入とイランの悲痛な事件、このどちらが欠けていてもこの楽器は今家に存在していません。しかし楽しく弾いていながらも状況が状況ですから「あの時買っておいて良かった」と軽々しくは言えません

 実はウードの方でもちょっと普通ではない縁の絡み合いがあったのです。最初は全く別のあるトルコウードを購入する予定でした。目当てのウードを扱っている日本のオンラインショップが2店あり、そのうちの1店で注文しましたが、約10万円払って届いたのは同メーカーの約3万円の廉価版のもの。さすがにこれは受け取れないと返品・返金手続きをしているほんの23日のうちに、もう1店にはあった在庫が売れていってしまいました。そこでトルコのメーカー直売オンラインショップで購入しようとしましたが、サイトの技術的不備のため購入完了に至らず、メールで問い合わせをしても何かの行き違いか、返信を受け取ることはありませんでした。

 その最中は、これほど見事に不運が続くなんて、と珍しく真っ暗に沈み込んだものです。「この際どれでもいいから」などと焦る気持ちを落ち着かせ、弦長は 585mm であることと店主が信頼できる方であること、この2点に絞って探して見つけたのがこの7コースのものでした。今となっては、「ウード」ではなく「この個」でなくては私の現在の西洋音楽をも含んだレパートリー、こんなに充実した毎日はありませんでした

 

 今起こって見えている事柄も途中の様相に過ぎないのですよね。ウイルスは危険で恐いものかもしれませんが、恐怖に囚われて視野の狭くなった人間もまた怖いものです。世界ではコロナ関連の悲しい暴力事件も起こっています。日本でも程度はゆるいかもしれませんが、似たような嫌な事件も起きています。不安な時でも視野は広く保っておかなければ、焦りから判断を誤ることになりかねません。

 考えてみれば世界中の未来の教科書に載るような出来事を今まさに体験している最中です。そんな風にちょっと先の視点から今を眺めれば、後々顔から火が噴き出るような真似は大なり小なりできないと思えるのではないでしょうか。

 逆に少し過去に遡れば、私達にごく近い先祖でも大変困難な時代を何とか耐えてきてくれています。その時代の苦労を思えば、まだまだがんばれるとも思えるのではないでしょうか。

 何が本当の正解なのか確信が持てない中、それでも日々懸命にできることをし続けて過ごしていれば、この経験が後でどのような仕合せを呼ぶかは未知なのです

 

 これも言葉ではなんと表現してよいかわかりませんが、困難な中だからこそ、本当に心に響く美しい曲が生まれることがあります。これは20179月にフロリダとカリブ諸国を巨大ハリケーンが襲った時、同地域の友人知人を思って作られたクラシックギタリストによる曲です。

 このスペイン語の曲名を私が日本語にするとすれば「どうか無事でいて」としたいと思います。私もイラン、スペイン、オランダ、イタリア、ドイツ、イギリス、アメリカなど世界中にお世話になった人、かつて一緒に馬鹿騒ぎして遊んだ人々がいます。この曲の通り、どうか無事でいて欲しいという願うのみです。

 (私はこの曲の楽譜を購入してよく弾いていました。ほんの1年前はたしかに弾いていたはずなのですが、今では全くさっぱりです。どこでどうなるか本当にわからないものです…。)