SolitOUD

7コース13弦ウード&カマンチェと過ごす穏やかな日常

無口な教師 カマンチェ (1)

 もう先月のことですがカマンチェのヘッドパーツが無事到着しています。特に発送連絡もなく、いきなり届いたその日は私の誕生日でした。

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 カマンチェの方は焦らず・慌てず・ひとつひとつ、という感じでゆっくり練習しています。「そうか、こうするとこういう感じの音になるのか~」「あぁこうしちゃうと指に負担がかかって痛めちゃうか~(笑)」なんて楽器とじっくり向き合っていく中で何かを発見していくことを楽しんでいます。

 それにしても、カマンチェが練習を通して教えてくれることってとても興味深いことばかりです。いきなり核心を突いてきたりします。カマンチェのみならず、他の楽器や他の物事にも言えるような基礎の基礎、もっと根本的で普遍的な部分から見直すよう教えてもらっているようです。今日はその中のひとつについて書きたいと思います。

 

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「無心で弾きたい」

 私の楽器演奏においていつか達成したい目標のひとつは「無心で弾くこと」です。頭に何かが浮かんだり人前で他者を意識したりすることなく弾き通すにはどうしたらいいのだろうとずっと考えていました。

 だって「無心で弾こう」などと意識してしまった瞬間にもう落第しているわけです。この難しい問いに対してその身を持って教えてくれているのがカマンチェ先生なんです。

 単純な開放弦のボウイングや運指練習。こういう基礎練習を通して、本当に何も考えずにただ弾いている時の音色と、「よし次はこう弾こう」と「弾こうとしてしまった時」の音色が明らかに変わることに気づきました。

 正確に言うと、弾こうと意識した瞬間に、手指に必要以上の力を無意識にかけてしまい、「初心者ががんばって弾いているような」「作為的な」音に変わってしまうのです。弾こうとすれば「あっ」という間すら空けずに「それでは君の思うような無心では弾けていないよ」という現実を楽器の方から逐一示されるのです。これは厳しいそして面白い!

 

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 無思考でただ弾けた時の音が豊かで甘くて本当に心地良いんです。心地良いからまた浸りたくて「すっと入っていく」。でもあれを弾いてみようかとか録音してみようかとか、少しでも意図を持ってしまうとすぐに引き戻されてしまう(笑)。

 どうもその状態に入るにも訓練と慣れが必要みたいです。そしてやはり単純なものから段階を追って練習するのが道理のようです。曲を弾くにはとても複雑な順序操作が必要ですから、いきなり初心者が1曲無思考で弾くというのは無理がありますね。だからこそ単純な基礎練習から、本当にじっくり亀の歩みで進んでみたいと思います。

 

 最後に情感あふれるカマンチェの曲をご紹介します。一般的な日本人にも馴染みやすいAマイナーの曲です。囁きかけるようにそっと入っていくこの歌い出しは擦弦楽器ならではの魅力ですね。

 この曲は「Over The Green Fields」という韓国ドラマの主題歌だそうで、Sad Romance とか Sad Violin とかで検索すると色々なバージョンが出てきます。ミソラ~と軽やかなスライドで入るところとか、そうかそこでスライドすれば味わいを加えながらラを薬指で取れるのか~なんて目から鱗です。曲を弾くなど本当にまだまだ全然ですけれどね。